お助け猫の手


  高校演劇初心者の、芝居作りや基礎練習や、練習時の疑問等に、少し役立つかもしれない技術的な事中心とした小知恵です。すばらしい舞台を見ると感動するとともに、何とかしてあんな舞台にしてみたいとは思うけれど、どうしていいか分からないし、誰も教えてくれない。経験知を共有しようとせずに、自分たちのノウハウとして囲い込んでしまう。そう言うのって、ちょっとなあと思います。高校演劇が教育の場である以上、経験知はできる限り公開して、共有した方がみんな幸せになるし、全体の底上げにもなると思うんですがね。
 そういう意味で、できるだけ、いろいろな経験知を拾い集めていきたいと思います。
 また、こんな時どうすればよいかと悩んでいる点や、ウチはこんな事やっててこんな小技があるよーという、悩みや、疑問や情報、アドバイスをお知らせいただければ幸いです。みんなで助け合う小技の小部屋にしたいものです。
 なお、●高校演劇初心者の扉 ● LINK もご参照ください。

  ●疑問、質問、情報はこちらまで。 whitewing20_08@yahoo.co.jp
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●RPG手法による脚本製作について
●おウチでできる個人練習
●練習の場で、こんな時、
どうしたらいい?

●音響さんにとっても便利なフリーソフト&HP
●プロからのアドバイス
●脚本の書き方のツール




●音響さんにとっても便利なフリーソフト&HP





  お芝居の時、情感を醸し出すためによくBGMを使いますね。でもできあいのCDを流すだけではどうにも演出の要求に応えられない場合があります。同じ音楽でも、これを例えば、オルゴールにできないか、だとか、もっとスローなかんじにできないかだとか、こことこことをきって、これをつないでくれだとか。けっこう無理難題をいわれます。でも、最近は、インターネットから 無料ソフトをダウンロードして それを使えば、けっこういろんな作業ができるようになりました。もうすでに使っているところもあろうかと思いますが、いくつか紹介いたします。パソコンがあれば、いろんなことができますから。以下は、最近管理人が使ったソフトやHPです。




★★★まずは、色々な音楽を色々なスタイル変換できるHPです★★★

●音楽研究所
 ここは、音楽全般にわたる情報を提供しています。ミュージック・ソフトや童謡・唱歌・アニメ、 クラシックのMIDI,WAV,MP3,3gpのファイルがダウンロードできます。
 著作権フリーの伝統的音楽や童謡などさまざまな音楽を、色々なスタイルで編曲できてそれをダウンロードできるHPです。一つの音楽をテーマ音楽として、さまざまなスタイルで使い分ける事ができます。●Link のコーナーにも紹介しましたが、感涙ものです。一度のぞいてみてください。作品・素材集のコーナー など即使えます。たのメニューもいろいろと面白いです。

 ●URL http://www.asahi-net.or.jp/~hb9t-ktd/music/musj.html


★★★ 次に、音声にはさまざまなフォーマットがありCDや効果音として使うには、基本的に WAVファイル にしたほうがよろしいので、インターネットで手に入れられる音源のMP3などのファイル形式を WAV形式 に変換する必要があります。以下のソフトは使いやすいと思います。着メロなんかにも使えますよ。

●Switch音声ファイル変換ソフト

【便利な機能を多数搭載】 ・ 40種類以上のフォーマットを簡単に素早く変換 ・ DVD から音声を抽出し変換 ・ オンラインデータベースから各トラックの情報を入手 ・ 変換前にトラックを試聴 ・ 一度に多数の音声ファイルを一括変換 ・ 複数のファイルフォーマットを一度に変換 ・ 変換時に自動的に音声をノーマライズ ・ 「クイック変換」用に右クリックメニューをカスタム化 ・ 固定または可変ビットレート対応のエンコーダでMP3変換 ・ WAV エンコーダおよび flac コンバータは幅広いサンプルレートに対応 ・ コマンドラインのプラグインを使って音声ファイルの変換と圧縮を自動化 ・ インポートした動画ファイルから音声(avi, mov, mpeg)を抽出 ・ 各フォーマット(mp3、wav、wma、flac および ogg)に応じたタグ情報をキープ ・ プレイリスト(m3u と PLS)をインポートし変換

【Switchはここが違います!】 ・使い方がとても簡単。ファイルを一覧に追加して、変更用フォーマットを設定したら変換ボタンを押すだけです。 ・数多くのフォーマットに対応しているため、どんなファイルでも自在に変換 ・一括変換機能を使って大量のファイルを一度に変換できるので作業時間を大幅短縮 ・変換前に音声を試聴できるので安心して作業ができます ・DVDから音声を抽出してそのままフォーマット変換できるので作業効率がアップ ・動画から音声を抽出できます ・音楽トラックはオンラインのデータベースから曲名などの情報を入手できます

【こんな方にお勧めです】 ・iPodや携帯電話で聴くことができる形式に音楽ファイルを変換 したい方 ・音声ファイルを圧縮してハードドライブの容量を節約 したい方 ・お気に入りの音楽をamrファイルに変換して着メロや着うたを作成 したい方 ・他のソフトでは対応していない音声ファイルを変換 したい方 ・動画ファイルやDVDから話し声や音声などを抽出 したい方 ・お使いの音声編集ソフトが対応していないファイルを開きたい方 。

 以上、宣伝文句ですが、単純な目的使用ももちろん簡単。使い慣れたら色々遊べると思います。

 【ダウンロード先】http://switch-win-jp.softonic.jp/ より。


★★★ さて、これで元になるデータができますので、次は、切ったり、貼ったりで、短い効果音をつなげたり、余分鳩時計の音を切ったりとか、演出の都合とか演技の長さに合わせて加工できます。

●音の切り貼り 「サウンドエンジン」

  WAVEファイルの切り抜きやエフェクトの付加などができる音声波形編集ソフト。ステレオまたはモノラル形式のWAVEファイルを読み込んで、レゾナンスやハイパス・ローパスなどのフィルター効果を与えられる。フィルターの強弱を変更するつまみが用意されており、音を再生しながら波形を微調整できる。音声データの一部を選択して部分的に加工することや、音声データの一部を削除して前後の音をつなげる機能もある。また、曲全体の平均ボリュームレベルを検出し、自動的にボリュームレベルを調整することも可能。加工後の波形はWAVEファイルで保存できる。

 【ダウンロード先】 窓の杜 http://www.forest.impress.co.jp/library/software/soundengine/ よりダウンロード。


★★★ 完成したらそれらの音をまとめて音楽CDに書き込めば効果音やBGMが一枚のCDになります。書き込みソフトは、 いろいろありますが、下記のものなど使いやすいと思います。

●Power2Go 9 Essential 
 
 「Power2Go 9 Essential」は、“Power2Go 9”シリーズの無償版。最上位版である「Power2Go 9 Platinum」の機能を15日間利用できるほか、15日間経過した後は、BDXLを含むBlu-ray DiscやDVD/CDへ各種データを書き込む機能や、音楽CDを作成する機能が継続して利用可能。また、コピーガードがかかっていないBlu-ray Disc/DVD/CDの内容を同じ種類のディスクへコピーする機能も利用できる。そのほか、同梱のデスクトップアクセサリーへファイルをドラッグすることで、手軽にデータの書き込みを行える“ガジェットモード”機能も用意されている。

【ダウンロード先】  窓の杜 http://www.forest.impress.co.jp/library/software/power2go/


●x-アプリ

x-アプリ(xアプリ/エックス・アプリ)は楽曲や動画、写真、ポッドキャストなどを管理できる、SONY(ソニー)製の統合音楽管理ソフトです。音楽CDからの取り込みや音楽CDの作成、音楽配信サービス「mora」からの楽曲の購入などができます。iTunesに似て高機能ですが、x-アプリはソニー製ウォークマンやメモリースティックへの転送機能を備えている点が特徴です。ソニー製品を使っている人に必須の定番ソフトウェアといえるでしょう。

x-アプリの画面は、青を基調としたすっきりとした見やすいデザインです。ライブラリ(音楽ファイルの管理)、取り込み・サービス(CDからの取り込みや音楽ダウンロードなど)などの各機能は、画面左のリストにまとまっているので、迷わず使えます。ただし音楽や動画再生時には画面の一部に広告が表示されます。目障りな場合は「ミニモード」にすれば、再生/停止/早送り/巻き戻し/音量調整しか表示されないシンプルな画面に変えられます。

x-アプリは、iTunesのようにプレイリストを作成したり、音楽ジャケットなどの情報を自動取得(Gracenote)するなどの管理機能を備えています。また「おまかせチャンネル」機能では、登録した楽曲を解析して「朝のおすすめ」「深夜のおすすめ」など、気分や状況に合うおすすめをしてくれます。曲を選ぶのが面倒なときに試してみると良いでしょう。その他にも、音楽付きのフォトアルバムやビデオ作成機能も備えているなど多機能です。

x-アプリはiTunesやWindows Media Playerなどの音楽ファイルを取り込むこともできます。x-アプリは多機能で便利な反面、起動や楽曲の取り込みなどに時間がかかることがあります。なおx-アプリはウォークマン用ですが、Sony Ericssonのスマートフォン・PSP(ウォークマン含む)に音楽を転送する場合はMedia Go、auケータイに転送する場合はx-アプリ for LISMOが必要です。


x-アプリは以下の形式に対応しています 音楽CDからの取込: 3GP、OMA、WMA、MP3、 WAV
ハードディスクからの取込:3GP、MP4、M4A、OMA、AA3、 WMA、MP3、 WAV 、KDR、M4V、AVC、WMV、MPG、JPEG、JPG、JPE、JFIF、GIF、PNG、BMP、DIB、TIF、TIFF、OPML、XML、M3U

良い点 •音楽CDの作成、配信サービス利用が可能
•ウォークマンへの転送機能を備えている
•すっきりとした見やすいインターフェース
•音楽付きのフォトアルバムを作れる

惜しい点 •起動や楽曲の取り込みなどに時間がかかる

【ダウンロード先】 http://x-apli.softonic.jp/

★★★ その他 ★★★

 あとは、たとえば、不気味な音 とかいうのを作れと言われたときに、作るソフトがあれば完璧ですね。作曲ソフトや加工ソフトですね。
 それは、また、次に。今回は、 単純な加工と切り貼り、書き込みを想定しました。これでもけっこういろいろと使えると思います。



●おウチでできる個人練習
 ●表情筋の運動  表情筋は訓練しないとなかなか動きません。鏡を見ながらやってみましょう。結構ものすごいものがあります(-_-)

◎あご
  1.閉開閉。繰り返す。・・・下あごをしっかり動かすこと。
 2.前後前後・・・・下あごを前に奥に、しっかり動かすこと。

◎ほお
1.膨らます。ふつうに。・・・これを繰り返す。しっかり膨らますこと。
2.頬の筋肉をあげる。・・・つまり笑う。
  笑う。ふつうに。・・・繰り返す。目も笑って頬の筋肉を持ち上げる。

◎ひたい
 1.まず顔、目はまっすぐ前を向くこと。
   眉だけを上下させる。上下、上下、上下・・・

◎鼻
 1.膨らます。ふつうに・・。

◎舌
 1.上下右左、上下右左・・・。
   できるだけしっかり動かす。上だったら鼻につけるつもりで、上下左右にメリハリをつけて。曖昧にならないように。

◎目
 1.まず前を見て一点を決める。そして目を閉じてあける。この繰り返し。
   あけたとき、決めた一点を見るように。

◎口
 1.とがらす・・ふつう・・笑う(口の両端をつり上げる)・・とがらす・・ふつう・・への字。繰り返し。

◎その他
 1.視線を上・口を大きく開ける(驚いたように)
   視線を下。(鼻を見る)・口をとがらす。
    
この繰り返し

●腹式呼吸の方法 おなかから声を出せといわれてもようわからんという人はたくさんいます。そのための基礎。要は感覚をつかめばいいのですが。

★腹式呼吸について
1.『片鼻呼吸法』……横隔膜の動きの意識化
  簡単な「横隔膜」の動きの確認法
   ア.まず、鼻の穴の片方を指で押さえる。
   イ.次に口を閉じる。
   ウ.あいている片方の鼻の穴からだけでゆっくりと深く、深く深呼吸する。
   エ.胸一杯すって、全部吐く。
   オ.そうすると、肋骨の下あたりの「横隔膜が」
      息を吸うときは膨らんで下に押し下がる。
      息を吐くときは上に押し上げる
     その動きを感じる。
  何回も繰り返し、この感覚を覚える。
  腹式呼吸の時、その感覚になっているかどうかでチェック。
2.実際の腹式呼吸の練習法
  ア.まず仰向きに横になる。
  イ.1と同様に、片方の鼻の穴を指でつぶす。
  ウ.一度体の中に入っている空気を全部吐き出す。(このとき口で出しても良い)
  エ.次に、口を閉じて、約5秒間、あいている片方の鼻の穴から自然に入ってくるように息を吸う。
  オ.5秒間すったら(吸い切らなくてもよい。とにかく5秒間。)、2秒間息を止める。
  カ.次に、口から、胸の中にある息を5秒以内に(早くはかないこと)すべて吐き出す。
  キ.また2秒止める。
  ク.以下エ~キを3分程度続ける。
  コ.終わった後に、後屈運動を簡単にしておく(腹筋を使っているからのばしておく)。
  サ.少し休みを入れてこれを3セット。
  シ.なれてきたら次のような負荷をかけても良い。
     *なれてきたら、息を吐くとき徐々に「声」を出していく。
       はっきりとした声ではなくて、うめき声に似た感じで「音」を出す感じで始める方がよい。
     *寝たときに両膝を折って足をしき込む姿勢でやる。
     *おなかの上におもり(20キログラムぐらいまで)をおいてやる。

●普段から鼻だけでする鼻呼吸を心がければ、こんなに苦労しなくてもかなりいいらしい。
●鼻呼吸は意識しないとなかなか難しいそうだ。

●腹式呼吸のための腹筋運動  ただむやみやたらに腹筋しますとかえって体を痛めます。何のための腹筋運動かを考えてやりましょう。


以前のホームページ公開の際に、「THE AQUARIUSS STUDIO」の作者の安達成彦氏のご厚意により、横隔膜周りの筋肉を効果的につける腹筋運動を教えていただきました。氏は、ホームページでスタニフラフスキーシステムの講座や(スタニフラフスキーの名前初めて聞いた演劇部の生徒、ちょっと放課後生徒部まで来なさい。)、声優志望者への本音の辛口アドバイスを掲載されている演出家です。氏は又、専門的訓練を受けていない高校演劇指導者が闇雲に根性一本槍の練習で、生徒の声帯や筋肉を痛めてしまうことを心配されています。無理のない練習で楽しくお芝居をいたしましょうね。


■脚上げ腹筋(超ハード・コース)

1)仰向けに寝る。
  この時、手のひらは上に向け、背中全体を床につける。

2)息を吸いながら、膝を曲げないように、脚を90度まで上げて静止。

3)息を吐きながら、膝を曲げないように、脚を床上10センチまで下げて静止。

(ポイント)
 絶対に息を止めないこと。
 どこの筋肉が緊張・緩和するかを意識しながらやること。
 息を完全に吐ききること。

(解説)
 この腹筋は、ボイストレーナーがやらせるものです。
 実は、いわゆる腹筋運動は、腹式呼吸の要である横隔膜まわりの筋肉を鍛えるには向いていません。正しいフォームを知らずに回数だけやっても、腰を痛めることすらあります。
 が、この脚上げ腹筋であれば、腰を痛める心配もなく、横隔膜まわりの筋肉を実に効率よく鍛え上げることができるのです。

 これ、かなりキツいですよ(T_T)。
 体力に自信がある人でも、30回は辛いんじゃないかなあ。
 普通の成人男子だったら15回できれば上等、 女性であれば10回もいったら大したものです。
 でも、毎日やっていれば、30回でも50回でもできるようになりますよ。
 目安としては、30回できることを目標としてください。

「演劇とは3000年の歴史を持つ知的遊戯である。 全ての訓練は論理的に行わなければならない。合理性を失った訓練に意味はない。」
その通りなんですけどね~。





●練習の場で、こんな時、どうしたらいい

  ●会話しろって言われたけど よく会話ができてない、機械的に台詞言うてるだけやとかキャッチボールができないとか言われます。どういうことでしょうか。

 現実の日常会話の中では、そんなこと言われることはまずありませんね。会話で成り立つお芝居の場合、台詞はあくまでも書き言葉で、それをお芝居の空間の中で、役者同士が、演劇の場の言語として、お互いに始めて聴く会話として表現しなければなりません。当然、台詞が入っているので次に相手がどういうことを言うのか分かっているわけですから、実は結構、複雑な作業をしていることになるます。なかなかそこらあたりの感覚は初心者には、頭で分かっていてもつかみにくいものです。以下の文章は、そのことを考えるヒントとして、「フルタルフ文化堂」さんより転載させてもらいました。
 三人のお芝居の場面でのアドバイスですが、この三人というのが実は大きな手がかりになると思います。二人と違いお互いの関係が、より複雑に多用になり、台詞言う側も受け取る側もそれぞれ他の二人を意識した言い方受け取り方をしなければならないし、台詞を言わないときも、その関係が明確に分かるように表現しなければなりません。会話するって言うことは台詞を言うことだけでは無いんですね。従って、全体を統合して見た場合、演劇としての会話が成立しているかどうかの判定が、見ている側にとって判別しやすくなります。 役者をチェックする側にとっても、結構アドバイスしやすいし、お互い、会話しているという感覚がつかみやすくなります。
 当然、文章だけでは分かりませんので、実際に、ここに書いてあることを一つのヒントとしてやってみたらどうでしょうか。

【フルタルフ文化堂 2013.9.3の記事より】

演劇に関わっていると、「呼吸する」「立つ」「話す」「見る」など、ふだん空気のように行なっている無意識のふるまいが、実は奥の深いものであることに気づく。


 勤務校の演劇部の稽古中にこんなことがあった。舞台の上には3人の役者がいて会話する場面。ひとりが、二人を相手に話をする。オイラは立ち稽古中に少し口を出した。「その言葉はふたりに掛けた方がいい」

 部員のAさんは、ひとりづつの顔を交互に見てセリフを出した。それがあまりに機械的だったので、思わず苦笑いした。

 「いやいや、それではダメ。全然二人にかかってない」

 きょとんとしている。どうもピンと来ていないようだ。オイラはAさんに言った。


 「「ふたりに掛けろ」と言われて、とりあえずあなたは二人を見るフリをした。それはあくまで「見るフリ」に過ぎない。気持ちが足りない。ほんとうに親しい者同士の会話には「あなたと話していると楽しい」「あなたとの関係をずっと良好に保っていたい」等々、「言外のメッセージ」が含まれている。そうした気持ちがないから、三人の関係がギクシャクして見える。


 「あなたの目は「泳いでいる」。まずは一人目の相手をちゃんと見ること、それがあなたが最初にやるべきこと。相手を大切に思う気持ちを保持して、あなたがきちんと見れば、相手も自然にあなたを見る。


 「次に、一人目の相手から目線を離してみよう。あなたの関心がどこに向かっているかが気になるから、相手はあなたの目線を追うはずだ。その状態であなたが二人目を見ると、相手も二人目を見る。すると三人の目線が合わさる。これで「三人で話している」状態ができあがる。


 「相手を見てから目線を離す、これは会話をコントロールする基本だ。観客を役者に感情移入させるのも、同じような原理である。向かい合っての会話の途中、観客の方に目線を振り出して、観客と目線を交差させれば、観客はその役者に感情移入する。その後、観客から目線を離して、相手役に戻すと、あら不思議、観客はあなたに感情移入して、あなたの視点から相手役を見るのである。


 とまあ、Aさんに対してそんな話をひとくさり述べる。「わかりました」とAさんは言う。だが言葉のうえでその理屈は分かっても、Aさんの身体はまったく理解していないことを、オイラは知っている。何度も何度も稽古しないと、その身体運用は身体化されないだろう。Aさんはフツーに不器用なのだ。


 フルタは何を得意げに書いているのだと思う人もいるかも知れない。相手の気持ちを自分の側に引き込むというのは、多くの人が日常で当たり前にやっていることである。少し器用な役者なら、何の苦もなくこなすだろう。だが、人がどんなふうに「三人で会話」するのか、真剣に考える機会など、芝居の稽古がなかったら、おそらく一生なかったはずだ。無意識に行なっている身体運用を言語化することは、日常を意識的・自覚的に生きるという姿勢の養成につながる。器用にこなす役者には、そもそもそんなプロセスは必要ない。これは不器用な者の特権であるとオイラは思う。




●RPG的手法による脚本制作について
 わさわさみんなで作る脚本の作り方の一つの手法です。ストーリー系ではなれたら意外と効率がよいと思います。実際にやられた学校の実践報告です。 

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1.はじめに
まさに苦し紛れの手法だった、としか言いようがない。
「自分たちで書きたい」という生徒からの要望に付き合う事、約2ヶ月。
「このままでは間に合わない…」と生徒に任せる事に見切りをつけ、仕方なく脚本制作に乗り出したのが3月下旬、そこから1週間足らずでテキストを起こし切った自分を褒めてやりたい(笑)。もちろん、そのテキストの基になった作業に関わった生徒も含めての話であるが。
ちなみに、「RPG的手法」としたが、正確には「D&D的手法」である。「D&D」=「ダンジョンズ&ドラゴンズ」とは、ゲームの世界の創造主であるダンジョンマスターが、プレイヤーとやり取りしながら、ゲーム内のイベントに応じてサイコロを振らせてゲームを進めていく、どちらかと言えばアドベンチャーゲームの色合いが濃いゲームである。

2.可能となった条件
手前味噌になるが、次のような条件が揃っていたから出来たように感じる。
原案担当者による「世界」がある程度しっかり立っていた事。役者担当に宛て書きされているようなキャラクター設定であった事。そして、全員が脚本制作の方法を多少は学んでいた事。顧問が脚本を制作した経験があった事。
今回の取り組みは、生徒同士によるエチュードを積み重ね、全面的に試行錯誤しながらの脚本制作ではない。
「世界」や「物語」の枠がある程度決まっていて、その中でそれぞれの役割を果たすキャラクターがいて、ある程度自由に動きつつ、それをまとめていく「統括者」がいる。そういう制作方法である。

3.実際の制作
(1) 役割分担
① 進行担当
世界の設定をし、物語の流れを管理した。キャラクター以外の世界の動きを考えた。適宜、それぞれのキャラクターに対して必要な情報を与えた。
② キャラ担当
役者一人につき、一人のキャラクターを担当した。それぞれのキャラクターの基本設定に加え、細かい設定を考えた。行動の傾向やクセなども各自が考えた。
(2) 準備物
① A7程度のメモ用紙
たくさん必要。用紙の端をキャラクターごとの色で塗り、区別した。
② 出し合ったメモを確認できる場
長机など。今回は長机二つに、進行担当とキャラ担当が向かい合って座った。
③ NPC
台詞出しなどの制作と同時進行でまとめていく時にあるとなお良い。制作には思いの外時間がかかる場合があるので、NPCがあると時間が有効活用できる。
(3) 制作の手順および注意点
① 設定や世界の共有
今回の舞台は近未来だったので、かなり話し合いを行って、世界を共有した。物語の舞台が「現代」、または「過去」でない場合、「そうなっている」事の理由なり経緯なりをしっかり設定し、かつ共有する必要がある。つまり、ファンタジーは必要以上に面倒だ。だから嫌なのだ。(笑)
また、登場しない人物についても、モデルを決めたりしてイメージを共有した。この事で、その人物を語る時の意識が統一された。
② 場面の設定
戯曲として描く予定の場面を選択し、その設定を行った。その場面までの出来事などを確認して、どういう場面なのかを確認した。
③ キャラ担当によるセリフや行動のネタ出し
a. 進行担当が描く場面の最初のト書きを出す。
その場面の始まりを、カードに書いて確認の場に置く。
(例)「AとBがいる。」
b. それぞれのキャラ担当が、自分のカードに台詞の内容や行動を書いて出す。
場面の予定内容を多少考慮しながら、台詞や行動を考える。割と「出した者勝ち」な扱いで、どんどん出す。
(例)「どうなっているのか、尋ねる」
台詞は、その内容を書くことにとどめる。戯曲としてテキストに起こす過程で、そのキャラクターとしてまとまりのある台詞の言い回しに整えるため、カード書きの段階から「台詞のクセ」などが生じないようにするためである。
台詞の裏づけとなる情報や出来事などは、適宜、進行担当がそれぞれのキャラ担当に与えることも必要な作業である。
c. 全員で眺めてみて整理する。
どんどん出しながら、「どうすればより面白くなるか」を考えて整理する。
物語の都合上、必要なキーワードや起こるべきイベントなどは、進行担当が調整する。場合によってはキャラ担当の台詞を変更するなどして、物語の進行方向を整える。特に、そのキャラクターとしてふさわしくないような行動をキャラ担当が出した場合などは、修正が必要である。
d. ある程度まとまったら、次のシーンへ進む。
出されたカードを順番に重ねて、確認の場から片付ける。シーン続行の場合は(b)へ、シーンが変わる場合は(a)に戻って作業する。
④ テキストへの書き起こし
カードを基に、台詞やト書きを起こしていく。それぞれのキャラクターの特徴を考えて、戯曲に整える。
その際、カードでまとめた流れのままでは面白くないと感じたら、多少カットしたり、並び順を変えたりする。そのためには、誰か一人が統括的にテキストを起こす必要がある。
ネタ出しには全員の発想が有効だが、戯曲には一人の作者の統一された視点が必要である。

4. 終わりに
今回の制作は、「物語」を描くに終始した印象である。これは想定内のことである。原案者が描きたい「物語」があり、その枠を保ちつつの展開なのであるから、どうしても「物語」先行の傾向になる事は否めない。ゆえに、「説明したい」事が多くなってしまうのは致し方ない。
講評でも指摘していただいたが、素材を絞って、キャラクターたちがどう行動するか、どうせめぎ合うか、どんな変化を見せるか、そちらに軸足を置かないと、「説明」の傾向からの脱却は困難であろう。
今回の制作での成果として、キャラ担当の生徒たちの意識の変化があげられるだろう。
「まだ訪れていない世界」を描くには、その世界のすべてを設定せねばならず、そのためにはその世界に至る前にどんな事があったのかを想像しなくてはならない…。軽々にファンタジーに手を出すものではないと分かっただろう。
それと同時に、今の世界も十分に知っていない自分たちの状況にも気づいたようである。彼らの感想にはそういった内容が書かれている。ゆえに今回の制作は、自分の周りの世界を知り、自分と向き合う良い機会になったようである。付き合ったこちらは、大変な労力であったが…(笑)
「こういう手法もあるのだな」と感じる今回の取り組みを、またバージョンアップさせて活用できるかも知れないと密かに考えたりもする、大会後の今日この頃である。

5. おまけ:取り組んだ生徒の感想
以下に生徒から預かった感想文的な雑文を載せる。文章表現がおかしいところは多少手直しした。

《原案担当者》
原案の時点で行き詰まる点はいつも「必要性」でした。アイデアやキャラ、場面はいくらでも浮かぶのに、「必要性」を考え始めると、全てがダメに感じてきます。個性やクセを考える。となると、似たようなキャラになってしまい、知識不足なのを痛感しました。なので、本をとにかく読みます。
RPG風制作については、それぞれの立場で動きたいように出来るので、とてもよい方法だと思います。ただ、動きではなくセリフで書いてしまうのは、動きが少なくなる原因だと重いので、そこは改善点だと思います。後は、動きとは別に心境の変化なども一緒に考えていけば、読み合わせや稽古の時に気持ちを出しやすいんじゃないかなと思いました。

《キャラ担当①:A》
今回の台本作りでは、自分がそのキャラになって動いていくということでやりました。よくそのキャラを変な方向(=必然性のない方向)に動かしてしまい、怒られたりしました。だからこのやり方をするときは、自分の動かすキャラについて、しっかりと考えることが大切だと思いました。
結構大まかにどんな感じになっていくのかは分かっていたけれど、細かい事は他の人物の受け答えによってどうなるか分からないので、自分が思っていた事ではないことが返ってきたりして「そうきたか」と思ったりしました。

《キャラ担当②:B》
メリット:自分がその役になりきれる。また、制作の時に自分が担当した役の場合、自分の役に入りやすい。
デメリット:話の筋からそれる事がある。みんなが集まらないと制作できない。

《キャラ担当③:C》
RPG風(?)風に進める方法でやりましたが、いつもより進み方がスムーズだったと思います。少し進み方が遅かったかもしれませんでしたが、慣れればもっと早くできると思います。何より、キャラの立場になって考えられるので、思ったよりも楽しく制作する事ができました。自分で考えることも大切ですが、こうやって皆で考えるのもありなんだなと思いました。
これはやった事がないのでできるかは分かりませんが、この方法をひとりで何人ものキャラを担当してやれば一人でもやる(=制作する)事は可能なんじゃないかなとも思いました。今回はキャラの気持ちになりきれてなかったり、説明文っぽくなってしまったりしたので、次回はそれに気をつけたいと思います。

《キャラ担当④:D》
設定を考える時、自分の知識がほとんどないことを実感しました。何にしても学ぶことは大切だと分かりました。
創るときは、キャラクターの今まで生きてきた時間を理解するよう努力し、人との対話で生まれてくるものを大切にしました。
脚本には必ず作者の意図するものがあり、必要のない台詞やシーンはない、全てのことに意味がある、ということを深く知る機会になりました。
一つのことを追求することで得られるものを、今回の脚本作りで学びました。