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「眠れぬ夜にみる夢は」
           作 結城 翼

☆登場人物
イヴ・・・・・ドール型ロボット
オリビア・・・ドール型ロボット
マリア・・・・あずみの養育係
ユウイチロウ・・研究員・ロボット修理士
あずみ・・・・ユウイチロウの妹

 

Ⅰ プロローグ うれしいひなまつり

ピアノの「うれしいひな祭り」が弾かれる。
幕が開く。
上手のピアノに薄暗くトップサス。
あずみ(イヴ)がピアノを弾いている。姿ははっきりとは見えない。
舞台中央にイス。ミルティスとルナの人形。
下手に紅い格子、その前に壺にいけられた見事な左右の桃の花。周りには桃の花が散っている。
ユウイチロウ。あずみを見つめている。薄暗いトップサス。
曲の終わりにピアノの不協和音が大きく響く。
ルナとミルティスのトップサスのみ残して、ばしっと暗転。
「うれしいひな祭り」オルゴールの音。
それとともに、全体がゆっくりと暗転。

Ⅱ 雛の夜

オルゴールの音が切れ切れになりやがてとぎれる。
溶明。
イヴが座っている。ミルティスがいる。
ネジを巻いている。

ユウイチロウ:起きていたのか。
イヴ :ええ、おにいちゃん。
ユウイチロウ:相変わらず巻いてるね。
イヴ :する事もないし。

と、手を離す。
オルゴールが流れる。
少し聞いて。

ユウイチロウ:具合はどう。
イヴ :いいわ。今日は。昼間なんか、少し外を歩けたもの。
ユウイチロウ:暖かかったからね。
イヴ :桃の花咲いてた。ほら、塀の隅にある。よくにおったの。
ユウイチロウ:ああ、あそこはよく陽があたるからね。昨日つぼみがほころんでた。それかい。
イヴ :マリアに活けてもらったの。
ユウイチロウ:マリア何か言ってた?
イヴ :何も。
ユウイチロウ:そうか。
イヴ :ねえ、いつまで生きられるのかなあ。私。
ユウイチロウ:何、馬鹿なこと言ってる。いつまでだって、生きられるよ。
イヴ :嘘が下手ね、お兄ちゃん。
ユウイチロウ:嘘じゃないよ。

くすっと笑って。

イヴ :いいの。むりしなくても。自分の身体は自分がいちばんよく分かるんだから。

小さい間。

ユウイチロウ:顔見せて。
イヴ :ええ。

目の前で、手を振って。

ユウイチロウ:見える。
イヴ :何も。
ユウイチロウ:そうか。
イヴ :別に不自由なんかないわ。

微妙な間。

ユウイチロウ:分かってる。

顔を消毒するマイム。

ユウイチロウ:こんどは手を出して。
イヴ :はい。

手を出す。
再び包帯をほどくマイム。
両手を順番にほどきながら。

ユウイチロウ:やせたね。
イヴ :そうでもないわ。
ユウイチロウ:手首が細くなった。
イヴ :またくずれてたから。

小さい間。

イヴ :でも、スタイルよくなったかも。
ユウイチロウ:そうかもな。
イヴ :きっとそうよ。

くすっと笑う。
ユウイチロウ手をイヴの右手がしっかり掴む。

ユウイチロウ:どうした。
イヴ :答えて。

様子が違う。

ユウイチロウ:どうした。変だよ。
イヴ :あたし死ぬんでしょ。

間。

ユウイチロウ:何言ってる。さっきも、言った・・

手を離さそうとするが離れず。

イヴ :お兄ちゃん。本当のことを言って。この病気直らないでしょ。
ユウイチロウ:そんなことはない。
イヴ :あたしの目を見て言って。
ユウイチロウ:・・・。
イヴ :見えないけど分かる。お兄ちゃん困ってる。本当のこと言えないから困ってる。でも、言って。

間。
ユウイチロウ、ため息をつき。

ユウイチロウ:そうだよ。

緊張がゆるむ。

イヴ :よかった。
ユウイチロウ:よくない。
イヴ :いいえ、よかったのよ。これではっきりした。

手をはずそうとしたユウイチロウに。

イヴ :もうちょっと。
ユウイチロウ:え?
イヴ :もうちょっと、このまま。

手を再びしっかり握って、身体を預けるようにする。

イヴ :ちょっとでいいから。

小さい間。

ユウイチロウ:いいよ。

イヴ、見えない目で何かを見つめ続ける。
必死な感情に堪えている感じ。死の不安かも知れないし、愛情かも知れない。
長い間。
やがて、ゆっくりと緊張がゆるむ。
優しく、手をはずしてやる。ユウイチロウ。

ユウイチロウ:包帯巻くよ。
イヴ :待って。このままでいい。
ユウイチロウ:だけど。
イヴ :今日は、このままにさせて。お願い。明日からはまた巻くから。

間。

ユウイチロウ:分かった。・・そのまにしとこう。だけどきをつけろよ。いいね。
イヴ :分かってる。

ばたばたと足音。

マリア:まあ、どうしたんです。包帯もしないで。
ユウイチロウ:いや、それは・・。
マリア:それ以上皮膚が崩れたらどうします。昨日も崩れててお医者さんがおっしゃってたでしょ。いつも清潔にして置きなさいって。
ユウイチロウ:わかってる。けど。
マリア:ユウイチロウさんがついてながら、なんて不注意なんです。誕生日でしょ、明日は。
ユウイチロウ:だから。
マリア:だからじゃないですよ。十三参りだって言うのに。みっともないったらありゃしませんよ。昔なら成人式だもの。それが。
イヴ :わたしが頼んだの。

冷たい声。
小さい間。

マリア:お嬢さんが。
イヴ :そうよ。だからほうっといて。
マリア:いいえ、顔ですよ。大事な。
イヴ :もう大事も何でもないわ。
マリア:何を言うんです、女はね。顔が命です。だいいち、お嫁さんになるとき。
イヴ :いけないわ。
マリア:悲観的なことおっしゃって。
イヴ :そんなに時間は残ってないもの。

間。

マリア:時間がないって・・お嬢さん・・まさか。

とユウイチロウをにらむ。
ユウイチロウ目を伏せる。

マリア:知ったんですね。
イヴ :ええ。
マリア:なんて事。ユウイチロウさん。あなたは。
イヴ :マリア。
マリア:知ってしまったら仕方ありませんけど、責任はユウイチロウさん、あなたが取るんですよ。
ユウイチロウ:分かった。
マリア:あなたのために言わなかったんですよ。ああ、なんてことだろ。

間。

マリア:とにかく、おちついて後で話しましょ。
イヴ :マリア。
マリア:あとで。

と、ばたばたと去る。
小さい間。

ユウイチロウ:すまなかった。いやな思いさせてしまって。
イヴ :そんなことないよ。そんなことない。
ユウイチロウ:とにかく、包帯巻いとこう。お医者さんも言ってるし。
イヴ :約束したじゃない。
ユウイチロウ:でも。
イヴ :もう巻かなくていいよ。自分の顔見えないし。
ユウイチロウ:でも。

と、包帯を持って巻こうとする。
その手を押さえる。

イヴ :いいの。本当に。

と、その手を取って引き寄せる。
ポーンとピアノ。
ぎりぎりとネジを巻く音。

イヴ :・・忘れない。

ユウイチロウ、その手を取り。

ユウイチロウ:雛祭りだよ。

二人、見つめ合う。
見えない目と見える目。
オルゴールの音。
再び、イヴの手がユウイチロウの目を探る。
探り当てて、ユウイチロウのめをなでる。ユウイチロウされるまま。
そうして、イヴの手はユウイチロウのかおをなで、髪をまさぐる。その手に力が入り。
そのまま、顔を寄せて覆い被さる。
二人、イヴが覆い被さった形で倒れるが。

マリア:何してるんです二人で。

マリアがいた。
そのままの態勢で。

イヴ :出てって。

厳しい声。

マリア:なにしてると聞いてるんです。変ですよ、あなたたち。
イヴ :出てって。時間ないんだから。
マリア:何してると聞いてるでしょ。

とつかつかと寄ってきて、二人を引き離そうとする。

イヴ :さわるな!!

マリア、飛ぶ。

イヴ :死ぬんだから、私。

と、冷たく言った。

マリア:お嬢さん。
イヴ :最後だから邪魔しないで。
ユウイチロウ:まて。落ち着いて。
イヴ :いいの。・・雛祭り、出来なかったね。

十二時の鐘が鳴りはじめる。

イヴ :時間切れよ。

すっと隠し持ってたナイフを頸動脈に両手で当てた。

マリア:やめなさい。
イヴ :大好きよ、お兄ちゃん。

一息でかききった。

ユウイチロウ:あずみ!

バンと明かりが変わる。
鐘の音も止まる。
立ちつくすユウイチロウにトップサス。
フーガが始まる。

Ⅲ あずみのフーガ1

春。
土手。古びたバス停。
ユウイチロウとあずみが歩いている。
ピクニックかも知れない。
疲れた様子のあずみ(イヴ)。
振り返って、ユウイチロウがやれやれと言った表情で手を握る。。
あずみは、なずむがやがてうれしそうに手を預ける。
顔を見合わせる。
微妙な表情のあずみ。手を引っ込めようとするが、ユウイチロウはかまわず手を引く。
あずみ、幸せそう。

あずみ:おにいちゃん。

ポーンとピアノの音。

Ⅳ イヴの憂鬱

ユウイチロウの研究室。
イヴが飛び出してくる。
ユウイチロウがいないのでがっかりして、ピアノをボーン。
ユウイチロウが無表情に椅子を持って入ってくる。
イヴはユウイチロウにかじりつく。

イヴ :ユウイチロウ!

所かまわずキス。
ユウイチロウ、うるさそうにはずして。

ユウイチロウ:用意は。
イヴ :だーってー。

と、甘える。
冷たく。

ユウイチロウ:時間無いんだ。
イヴ :ユウイチロウ、冷たーい。

と、コケティッシュ。
十時の鐘が鳴る。

ユウイチロウ:ほら、もう十時だ。
イヴ :それがどうしたの。
ユウイチロウ:分かってるだろ。
イヴ :あんな子、壊れてていいのに。

じろっとにらみ。

ユウイチロウ:ピアノでも弾いてろ。
イヴ :いやっ。
ユウイチロウ:なら、邪魔にならないようにしてろ。・・まったく。
イヴ :いいもん。

と、ちょっとふてくされる。
が、すぐに。

イヴ :ねえねえ、これいいでしょ。

と、チョーカーをちらちら。

ユウイチロウ:ああ。
イヴ :ちゃんとみてよ。いいでしょ。気にいってんだ。
ユウイチロウ:イヴがいいならいいだろ。

気のなさそうに椅子をセットした。

イヴ :マリアに買ってもらったのよ。ねえ。見て。
ユウイチロウ:あとで。
イヴ :今じゃなきゃやだ。
ユウイチロウ:あとで。
イヴ :そんなこと言わないでほら、ユウイチロウ。

と、まとわりつく。
きっぱりと。

ユウイチロウ:イヴ。
イヴ :はい。

と、期待の眼差し。

ユウイチロウ:僕にとってとても大事なことなんだ。だから、分かるな。邪魔をするな。
イヴ :・・はい。
ユウイチロウ:ピアノ。
イヴ :はい。

と、チョーカーをいじりながらピアノの方へ。
淋しげ。

ユウイチロウ:あ、忘れてた。

と、つぶやき、去る。
見送って。

イヴ :バカっ。

イヴ、それでもピアノに向かいぽろぽろと弾きはじめた。
マリアが入ってくる。
イスの上のカバーとミルティスをもってくる。

マリア:準備はまだ。

イヴは答えない。
カバーを掛けて、ミルティスを置きながら溜息ついて。

マリア:イヴ。準備は。
イヴ :しらない。
マリア:知らないってことないでしょ。あんたの妹よ。
イヴ :しらない。

とりつく島もない。
首を振って、マリア出ていく。

イヴ :しらないもん。あんな子のこと。

ピアノをボーン。
と、なにか気になったようで髪をつつき出す。
一生懸命つつき出す。
ユウイチロウが入ってくる。
イブを見て。

ユウイチロウ:イヴ。

声の調子に叱責。
イヴ、びくっとしてつつくのをやめる。

イヴ :はい。
ユウイチロウ:まだかね。
イヴ :やろうとしたんだけど、髪が・・

と、ご機嫌伺い。
ユウイチロウは冷たい。

ユウイチロウ:まったく。

と、取り合わず椅子の後ろに何かを置いた。

イヴ :ねえ、私の髪きれい。
ユウイチロウ:ああ。
イヴ :ほんと。

と喜びの声。

イヴ :こんど髪カットしようかな。そめてもいい。
ユウイチロウ:ああ。
イヴ :じゃ、ユウイチロウいっしょに行ってよ。
ユウイチロウ:イブ。

と、振り返り。

ユウイチロウ:そんなことよりもっと仕事をしてもらいたいね。そんなために作ったんじゃない。

イヴの表情が変わる。

イヴ :じゃ、どんな為よ。エッチなくせに。
ユウイチロウ:なんか言った。
イヴ :何も。
ユウイチロウ:イヴもよく見ておくといい。新しいあずみの再生だ。
イヴ :はいはい。お古でごめんなさい。
ユウイチロウ:そのくせ直せよ。
イブ :何?
ユウイチロウ:素直にハイと言えばいいんだ。余計なことは言わない。
イブ :だって、プログラムだもん。
ユウイチロウ:それは失敗したと思ってる。だけど、再訓練で何とかなるだろう。素直がいちばん。
イブ :はいはい。あなた。
ユウイチロウ:ハイは一回。あなたはよけい。
イブ :はーい。

と、ちょろっと舌を出す。
顔をしかめて何か言いそうだが言わずに。

ユウイチロウ:連れてくるから。
イブ :人形も。
ユウイチロウ:あるじゃないか。
イブ :あたしの、ない。
ユウイチロウ:・・持ってくる。
イブ :ありがと。

ユウイチロウ、去る。
イヴ、ピアノの側で爪をためつすがめつ、磨いてる?
仕事も準備ももちろんしない。
マリアがせかせか入ってくる。コードとケーブルの束となにやら装置らしきものを持っている。

マリア:あきれた。またやってるの。
イヴ :なにを。
マリア:少しはてつだったら。
イヴ :そんな風には作られてないもの。あたしは、ユウイチロウへの奉仕だけ。それも、ここでじゃなくて。

くくっ。と笑う。

マリア:いやらしい。
イヴ :しかたないでしょ。文句はユウイチロウに言って。
マリア:いってるよ、何回もね。もういいかげん処分したらって。

イヴ、さっと振り向く。
敵意と警戒。

イヴ :なんか言ってた?
マリア:何も。
イヴ :でしょうね。たっぷりご奉仕してるもの。

と、いやらしく笑って。
明るくなる。
あきれて。

マリア:でも、あんまりひどいとほんとにスクラップされるわよ。
イヴ :はいはい。じゃ、働きますか。なんかねえ。そぐわないと思うんだけど。

と、ぶつぶつ言いながらピアノに向かい曲を弾く準備をしている。
マリアが出ていった。
ユウイチロウが、オリビアを抱いて連れてきた。
マリアもその後に続く。ヘッドギアみたいなものを持っている。

Ⅴ マリオンの呪縛

ユウイチロウ:ほう。やっと仕事する気になったか。
イヴ :ユウイチロウのためだもの。
ユウイチロウ:音はずすなよ。
イヴ :分かってる。

と、軽く投げキス。
ユウイチロウ、オリビアをイスに座らせた。
ミルティスを持たせる。オリビア、無表情。
マリアはヘッドギアをオリビアにかぶせる。
イヴは見回して。

イヴ :ルナは?
ユウイチロウ:あ、そうだったな。すまん。忘れた。・・マリア、取ってきて。
イヴ :・・いいよ。・・取ってくる。

イヴはちょっと苦しげにいい。去る。
マリアはコードをヘッドギアにつなぎながら、見送り。

マリア:いいんですか。
ユウイチロウ:何が。
マリア:イヴ。最近変でしょ。
ユウイチロウ:どこが。

と、あれこれしながら生返事。

マリア:いやにべたべたしません。
ユウイチロウ:別に。
マリア:そうですか。
ユウイチロウ:気にするな。プログラムの誤差の範囲だ。
マリア:ならいいですけど。ちょっと色気づきすぎですよ。

笑って。

ユウイチロウ:ロボットがか?そうみえるだけだ。
マリア:ナラいいんですけどね。

マリア、装置からケーブルを袖の方に引っ張っていく。
見やって。

ユウイチロウ:ここの部品がないな。取ってきて。
マリア:はい。

マリア、出ていく。
ユウイチロウ、準備をしている。
イヴがルナを手にしてひっそり出てきてみている。
が、思い直したかのように、甘え声で明るく。

イヴ :ユウイチロウ。
ユウイチロウ:ああ、後、後。
イヴ :つまんないの。
ユウイチロウ:ほら、早く。
イヴ :はーい。

と、鼻から声を出して甘えるような媚態。
   つーと、ユウイチロウの例えば腕を触って、くくっと笑う。
かわりに、イヴのお尻をぴしゃっとたたいたユウイチロウ。
イヴはくくっと笑った。
でも、ピアノの前に座ると表情が沈むか険しくなる。
ただし、ユウイチロウは知らない。
マリアが入ってきた。
部品を渡す。

ユウイチロウ:これでいい。はじめよう。

一歩下がる。
「カナリア」を弾きはじめる
明かりが変わった。
SSの明かりのみに照らされる。

ユウイチロウ:マリア。
マリア:はい。

と、マリアはミルティスを持ち、オリビアの手に持たす。

ユウイチロウ:オリビア。

と、優しく呼びかける。
オリビアは答えない。
ぐったりとしたまま。

ユウイチロウ:お前のほほえみが欲しい。お前は魂を持たぬ人形。その人形に私は命を与えよう。お前の忘れた歌を思い出すのだ。マリア。
雷鳴が微かにとどろく。

マリア:天候が不安定です。
ユウイチロウ:支障はない。このまま行く。電圧を上げろ。
マリア:はい。

と、マリアは装置を操作する。
ウィーンという無機的な音がする。
雑音も聞こえる。

ユウイチロウ:少し、バイアスがかかりすぎだ。測定値は。
マリア:リミットまであと、コンマ8です。
ユウイチロウ:もう少しいけるな。あげて。

ひぃーんと言う音に変わる。
オリビア、すこし、苦しげに動き始める。

ユウイチロウ:反応しはじめたな。
マリア:再調整には厳しすぎません。
ユウイチロウ:いや、精神性を高めたい。もう少し、負荷を与えよう。リミットまで?
マリア:コンマ5です。
ユウイチロウ:コンマ2まであげてくれ。
マリア:危険すぎますよ。
ユウイチロウ:あずみが生まれるんだ。行け。
マリア:はい。

高音と雑音が考査する。ノイズが激しい。
明かりが明滅。
オリビアは苦しんでいる。
雷鳴がとどろく。
見上げて。笑う。

ユウイチロウ:生まれるのにふさわしいな。苦しいかオリビア。

オリビアは苦しんでいる。

ユウイチロウ:産みの苦しみだ、オリビア。耐えろ。

雷鳴がとどろく。

ユウイチロウ:あずみ、お前の誕生祝いだ。
マリア:危険値です。リミットまで、コンマ1.5。
ユウイチロウ:0.5。行け。
マリア:知りませんよ。
ユウイチロウ:行くんだ!
マリア:はい。

操作した。
ばしっと言う音。
イヴががーんと不協和音をたてる。
落雷。
明かりが一瞬爆発して。暗転。
ゆっくりと溶明。
オリビアは目を開いている。
イヴは立ち上がりオリビアを見つめている。
間。

ユウイチロウ:生まれた。・・オリビア。

と、優しく呼びかける。
そのやさしさにイヴの顔がゆがむ。悔しそう。

ユウイチロウ:はずして。
マリア:はい。

マリアはヘッドギアをはずす。
コードをはずし、機器を片づける。ケーブルを片づける。
それらの動作の間に。

ユウイチロウ:オリビア。

再び優しく呼びかける。
イヴは聞きたくない風に顔を背ける。

オリビア:はい。
ユウイチロウ:私が分かるか。

オリビアは、まっすぐ、ユウイチロウを見る。

オリビア:ユウイチロウ。
ユウイチロウ:そうだ、ユウイチロウだ。
オリビア:ユウイチロウ。

と、少し喜びの感情が交じる。

ユウイチロウ:ほほえんでくれ。

にっこりとほほえむ。
イヴは押さえきれずに思わず見てしまうが。

ユウイチロウ:もっと。
オリビア:ユウイチロウ。

と、ほほえむ。

ユウイチロウ:そうだ。
イヴ :ユウイチロウ。
ユウイチロウ:なんだ。

いらただしげだ。

イヴ :紹介してよ。
ユウイチロウ:あとだ。
イヴ :いや、今がいい。

オリビアはイブを見る。
冷たい視線。
イヴは見返す。
間。

イヴ :この人誰。
ユウイチロウ:イヴだ。
イヴ :イヴよ。よろしく、オリビア。
オリビア:私知らない。

冷たい声。
間。

ユウイチロウ:お前の姉さんだ。
オリビア:姉さん?私、知らない。
イヴ :あんたねえ。出来立てのくせに、えらそうな口聞くんじゃないよ。
ユウイチロウ:やめろ。
イヴ :だって。
ユウイチロウ:役割は果たした。おとなしくしてろ。
イヴ :だって。
ユウイチロウ:イヴ。

間。

イヴ :分かった。

と、ピアノの方へ下がる。
その背中に追い打ちがかかる。

オリビア:私、あの人知らない。

一瞬止まるが、そのままピアノに。背を向けたまま座る。

ユウイチロウ:さあ、立って。

立つ。

ユウイチロウ:歩いて。

歩く。

ユウイチロウ:機能に支障はないようだね。お前は完全だ。
オリビア:私は完全。
ユウイチロウ:そうだ。もう一度ほほえんで。

オリビア、ユウイチロウにほほえむ。

ユウイチロウ:そうだ。お前は完全だ。やっと間に合った。マリア、マリア。

はい、と返事をして、出てくる。

マリア:なんですか。
ユウイチロウ:誕生祝いだ。準備をしてくれ。
マリア:はい。

と、意味ありげにイヴとオリビアを見る。

ユウイチロウ:いいんですか。知りませんよ。
ユウイチロウ:かまわん。気にするな。

イヴが振り向く。
ユウイチロウ、イブを見て。

ユウイチロウ:妹の誕生だ。いいな。
イヴ :・・はい。
ユウイチロウ:では頼む。
マリア:はい。

と、去る。

ユウイチロウ:イヴ。
イヴ :何。

と、声をかけてくれたので少し喜ぶ。

ユウイチロウ:俺も少し準備がある。相手をしてくれ、妹の。
イヴ :・・はい。
ユウイチロウ:頼んだぞ。

と、去る。

Ⅵ イヴとオリビア1

イヴ、少し切なげに見送る。
オリビアは無関心。椅子に座っている。
間。

イヴ :オリビア。

無視。

イヴ :オリビア。

無視。

イヴ :オリビア!

ゆっくりとイブを見て。

オリビア:聞こえてるわ。何度も言わないで。
イヴ :なら、なんで返事しないの。
オリビア:する必要がないもの。
イヴ :姉さんに向かって何それ。

オリビア、笑い出す。

オリビア:姉さん?人形でしょ。
イヴ :あんただってそうじゃない。
オリビア:そうよ。完全なね。
イヴ :そのいいかた何。

冷たく見やって。

オリビア:いやらしい。
イヴ :何が。
オリビア:好きなら好きと言えばいいのに。

間。

イヴ :何を。
オリビア:ユウイチロウ。・・好きなんでしょ。
イヴ :知らないわ。
オリビア:不完全なくせに素直じゃないのね。全身で好きだ、好きだってわめき立ててるくせに。
イヴ :あんたにらそんなこといわれる筋合いはないわ。
オリビア:いやらしい。
イヴ :何が。
オリビア:あなた、何のために作られたか私知ってる。

間。

イヴ :人形よ。私は。ユウイチロウが作った。
オリビア:そうね。私も人形。でも、あなたとは違う。あなたの使用目的は私と違う。

凍り付くイヴ。

イヴ :なんてこと。言っていいことと悪いことが。
オリビア:違うの。

畳み込むオリビア。

イヴ :違う・・わ。ユウイチロウは私を好きなのよ。
オリビア:その目的の為だけでしょ。
イヴ :違う。
オリビア:強情な姉さんだこと。認めたら。私はただのダッチワイフに過ぎないって。

沈黙。

イヴ :ユウイチロウを侮辱したら許さないわよ。ユウイチロウは変態じゃない。
オリビア:侮辱してないわ、私は。あなたを軽蔑してるだけ。
イヴ :軽蔑?あんたに軽蔑されるいわれはないわ。
オリビア:軽蔑が悪ければ哀れんでると言いましょう。お姉さん。可哀想なお人形さん。

イヴの目が燃える。

オリビア:怒ってもダメ。真実はかえられない。あずみは私。あなたじゃない。私は、ユウイチロウに愛されるために作られた。
イヴ :私だって。

オリビア、笑う。

オリビア:ほんとうにおめでたいのね。お姉さん。あなたはただの愛玩用のロボットよ。
イヴ :わたしは・・。

耳障りな雑音。
イヴの身体が一瞬止まる。

イヴ :わたしは・・。

オリビア、笑う。

オリビア:真実は、いつだって苦いもの。己の分際を知りなさい!

耳障りな雑音。
イヴの身体が崩れかける。

イヴ :わたしはそんなんじゃない!

崩れる。
オリビア、笑う。
マリアが顔を出す。

マリア:どうしたの。まあ!何したの。
オリビア:何も。

マリア、慌てて走る。
オリビア、笑う。

イヴ :ユウイチロウ・・ユウイチロウ・・。

イヴは苦しげに動き続ける。
ユウイチロウが駆け込んでくる。

ユウイチロウ:どうした。イヴ!

慌てて抱き起こす。

イヴ :ユウイチロウ、ユウイチロウ。

と、うわごとのように。

ユウイチロウ:オリビア、何があった。
オリビア:話してただけ。勝手に壊れたわ。だめなお姉さま。
ユウイチロウ:イヴ、イヴ!マリア!
マリア:はい!

と、顔を出す。

ユウイチロウ:やばい状態だ。再生処置を。
マリア:はいっ。

と、引っ込む。
ユウイチロウ、慌ててイヴを抱いて、去ろうとする。

オリビア:ユウイチロウ。
ユウイチロウ:あとで。イヴが危ない。
オリビア:壊れるものはほっとけば。
ユウイチロウ:そんなわけにはいかん。お前は、ここにいろ。

と、去る。

オリビア:ユウイチロウ。

と、はじめて少し、不安が混じる。
ポーンとピアノの音。

オリビア:ユウイチロウ・・あんなポンコツにかまうことないのに・・。

溶暗。

Ⅶ「紅い靴」

「紅い靴」が流れる。
溶明。
マリアが弾いている。
脇でオリビアが聞いている。ミルティスを持っている。
弾きながら。

マリア:お嬢さんの好きな曲でね。昔は、よくユウイチロウさんにひいて差し上げていらっしゃったんですよ。目が見えなくなってもね弾きながらよく歌ってらっしゃいました。

黙って、聞いているオリビア。
下手でイヴとユウイチロウが浮かぶ。
椅子に座らせて、懸命の再生処置をしている。
ヘッドギアをかぶせられているイヴ。
ルナを持たせられている。

マリア:紅い靴はいてた・・・

曲に併せて歌う。
ユウイチロウは不安げ。
イヴはなかなか反応しない。
歌い終わる。

オリビア:・・・イヴって紅い靴はいてたわね。あれ、ユウイチロウの趣味。
マリア:さあ、どうでしょう。
オリビア:人形ね。
マリア:人形?
オリビア:あの子も人形持ってた。
マリア:気がついたんですか。ルナっていって、お嬢さんがかわいがってましたよ。あなたのお人形といっしょに。

オリビア、ミルティスをぎゅっと抱きながら。

オリビア:青いお人形ね。
マリア:そうですね。

また、弾きはじめる。音は小さい。
歌は歌わない。
ユウイチロウの努力が実ったか、イヴは少し動く。
だが、完全ではないようだ。
ユウイチロウは、さらにいろいろと手を尽くしている。

オリビア:今頃は青い目になっちゃって・・。

オリビアは不安になる。

オリビア:異人さんのお国にいるんだろう・・ユウイチロウはやっぱりイヴがいいんだろうか。

マリアは弾きさして。

マリア:まあ、あなたは飾り物ですから。
オリビア:飾り物?
マリア:大切なものと言うことですよ。イブと違って。実用品じゃない。
オリビア:飾り物。
マリア:誤解しないでください。それほど大切にしたいものということです。ケガしたくない大切なお人形なんです。
オリビア:そうよね。

また、弾きはじめる。

オリビア:飾り物・・。ユウイチロウ・・。

溶暗。
下手のユウイチロウたちだけが浮かぶ。
一生懸命に作業。
イヴの唇が動く。
ユウイチロウと言ったったようだ。
ユウイチロウはさらに働く。
イヴがゆっくりとユウイチロウにからみつく。
溶暗。

Ⅷ あずみのフーガ2

夏。
夏祭り。祭囃子がにぎやかだ。
溶明。
ユウイチロウが歩いている。
いろいろと冷やかしているようだ。

あずみ:おにいちゃん。

あずみ(イヴ)がかけてくる。
ユウイチロウは待っている。
腕を組み、たのしそうに歩く。
林檎飴なんか買ってもらった。
うれしそうにほおばるあずみ。
向こうからユウイチロウの女友達が来た。
ユウイチロウ、誘われて、あずみに待たせて楽しそうに談笑。
あずみ、不安そうにみまもるが。
やがて、ユウイチロウはちょっとあずみに待つように言ったらしい。
おんなともだちたちとちょっとつきあうようだ。
行ってしまうユウイチロウ。
怒りとふあんにさいなまれるあずみ。

あずみ:おにいちゃん!

だがいってしまうユウイチロウ。

あずみ:おにいちゃん!おにいちゃん、おにいちゃん!!

林檎飴はいつのまにか落ちる。
泣きそうなあずみ。
祭囃子がむなしく響く。
溶暗。

Ⅸイヴとオリビア2

     イヴが椅子のそばにに座っている。
椅子の上は少し乱れた感じの布がかけられてある。ルナがその上に横たわっている。
イヴの目は開いている。
嬉しそう。
ぴょこっとオリビアがルナティスを抱いて顔をのぞかせた。
様子を窺う。
ユウイチロウはいない。明らかにほっとした様子で、静かにイヴに近づく。

イヴ :何しに来たの。

敵意は余りない。
はっとする。普通の態度に戻り。

オリビア:具合はいかが。
イヴ :おかげさまで。
オリビア:元気そうね。
イヴ :ユウイチロウがなおしてくれたもの。
オリビア:よかったわね。
イヴ :ふふっ。

と、思い出し笑い。

オリビア:うれしそうね。
イヴ :だって、ユウイチロウったら・・もう、いけない人。ふふっ。

と、ちょっと嫌らしい笑い。
嫌悪感がオリビアの顔に出る。

オリビア:いやらしい。
イヴ :あら、どうして。
オリビア:だって、あんたをおもちゃにするんでしょ。
イヴ :いけない。
オリビア:いけないって。

あきれる。

イヴ :いいじゃない。どうせ、わたしはそのために作られてるんでしょ。
オリビア:いなおるの。
イヴ :とんでもない。わたしのできることをしてるだけ。あなたにはできないでしょうけどね。
オリビア:当たり前よ。けがらわしい。
イヴ :あら、ユウイチロウはとてもよろこぶのよ。
オリビア:なんてことを。

と、辺りを見回す。

イヴ :気になるの。
オリビア:とんでもない。

と、乱れた椅子のあたりから目を話せない。

イヴ :そこでよ。

と、からかうように。

オリビア:まるで色情狂ね。
イヴ :ふふっ。やいてるの。
オリビア:いったでしょ。軽蔑するって。
イヴ :ご勝手に。
オリビア:ユウイチロウはあなたなんか愛してないわ。

イヴ、笑い出す。

オリビア:何がおかしいの。
イヴ :あきれた。人形を愛してくれると思ってるの。
オリビア:ユウイチロウはわたしを愛してるわ。だからわたしを作ったのよ。

イヴ再び笑う。

イヴ :飾るためにね。

痛いところをついたようだ。
沈黙。

イヴ :マリオンの話聞いたことないの。
オリビア:マリオン?
イヴ :昔々のお話。ある人形師がマリオンという美しい人形を作ったのね。あまりに美しいんでその人形師はマリオンに恋してしまった。

ユウイチロウが浮かぶ。

イヴ :人形は美しくほほえんだ。
ユウイチロウ:マリオン。

抱きしめるマイム。

イヴ :それから毎日、人形師はマリオンのほほえみを見た。
ユウイチロウ:マリオン。・・マリオン。
イヴ :でも、人形だから何も言わない。
ユウイチロウ:マリオ・・ン。
イヴ :でも、そのほほえみは誰をも見てはいない。
ユウイチロウ:やめろ。マリオン。やめろ。もつとほかの表情を見せてくれ。泣いてもいい。怒ってもいい。ほほえむのはもう飽きた。なぜお前は口を利かない。
イヴ :人形はただほほえむだけ。
ユウイチロウ:やめろ。それではまるで人形ではないか。悲しめ。怒れ。マリオン!
イヴ :人形は何も答えない。
ユウイチロウ:やめろ。その薄ら笑いをやめろ。なぜお前は、俺を見ない。そんなに俺が嫌いなのか。
イヴ :ただほほえむだけ。
ユウイチロウ:やめろ!!マリオン!

うち倒すマイム。
ユウイチロウが消える。

イヴ :所詮人形よね。
オリビア:何が言いたいの。
イヴ :わからない。人形を人は愛せない。永遠に。いくら愛してると思っていても、やがてそれは憎しみに代わるわ。心のそこからの。

笑う。

オリビア:あなただって人形じゃない。
イヴ :そうよ。それでいいんだものわたしは。

イヴ、自分の身体を自分で愛しそうに抱きしめる。

イヴ :わたしは人形よ。そうしてユウイチロウを愛してる。
オリビア:おもちゃにされるだけじゃない。あなたを愛してくれてるわけじゃない。
イヴ :そうよ。わたしはおもちゃよ。ユウイチロウは、わたしをおもちゃにしてくれる。わたしはその間すごくしあわせなの。それで十分じゃなくて。

間。
オリビアの顔は険しい。
椅子の方を見て。

オリビア:楽しい時間を過ごせたようね。
イヴ :そう。わたしとユウイチロウの。
オリビア:あきられなきゃいいけど。
イヴ :あんたも抱きしめられてみたら。

イヴ笑い出す。
オリビア、怒りの表情。
だが、何も言わずに、きっと振り向き足早に去る。
椅子のところで足を止め。
ぺっと唾を吐くマイム。
そのまま足早に去る。
イヴの笑いが続く中。溶暗。

Ⅹ あずみのフーガ

秋。
自宅。
午後のお茶の時間。
あずみが紅茶を入れた。
ちょっと考えてブランデーを垂らす。

あずみ:おにいちゃん。

ユウイチロウが本を持ってやってくる。
本を読みながら紅茶を飲む。
あずみはクッキーか何かを食べながら見ている。
間。
やがて、ユウイチロウはごちそうさまと席を立つ。
あずみ、そのカップを持ってのこった紅茶を一口飲む。

あずみ:おにいちゃん。

あずみ、カップをそっと胸に抱く。
溶暗。

ⅩⅠ オリビアの誘惑

オルゴールの音。
オルゴールの音が切れ切れになりやがてとぎれる。
繰り返される風景。
溶明。
オリビアが座っている。ルナとミルティスもいる。
ネジを巻いている。

ユウイチロウ:起きていたのか。
オリビア:ええ、おにいちゃん。

と、手を離す。
オルゴールが流れる。
少し聞いて。

ユウイチロウ:具合はどう。
オリビア:いいわ。今日は。昼間なんか、少し外を歩けたもの。
ユウイチロウ:暖かかったからね。
オリビア:桃の花咲いてた。ほら、塀の隅にある。よくにおったの。
ユウイチロウ:ああ、あそこはよく陽があたるからね。昨日つぼみがほころんでた。それかい。

小さい間。

オリビア:ねえ、いつまで生きられるのかなあ。私。
ユウイチロウ:何、馬鹿なこと言ってる。いつまでだって、生きられるよ。
オリビア:嘘が下手ね、お兄ちゃん。
ユウイチロウ:嘘じゃないよ。

くすっと笑って。

オリビア:いいの。むりしなくても。自分の身体は自分がいちばんよく分かるんだから。

小さい間。

ユウイチロウ:顔見せて。
オリビア:ええ。

マスクをはずす。
目の前で、手を振って。

ユウイチロウ:見える。
オリビア:何も。
ユウイチロウ:そうか。
オリビア:別に不自由なんかないわ。

微妙な間。

ユウイチロウ:分かってる。

顔を消毒するマイム。

ユウイチロウ:こんどは手を出して。
オリビア:はい。

手を出す。
再び包帯をほどくマイム。
両手を順番にほどきながら。

ユウイチロウ:やせたね。
オリビア:そうでもないわ。
ユウイチロウ:手首が細くなった。
オリビア:またくずれてたから。

小さい間。

オリビア:でも、スタイルよくなったかも。
ユウイチロウ:そうかもな。
オリビア:きっとそうよ。

くすっと笑う。
ユウイチロウ手をイヴの右手がしっかり掴む。

ユウイチロウ:どうした。
オリビア:答えて。

様子が違う。

ユウイチロウ:どうした。変だよ。
オリビア:あたし死ぬんでしょ。

間。

ユウイチロウ:何言ってる。さっきも、言った・・

手を離さそうとするが離れず。

オリビア:お兄ちゃん。本当のことを言って。この病気直らないでしょ。
ユウイチロウ:そんなことはない。
オリビア:あたしの目を見て言って。
ユウイチロウ:・・・。
オリビア:見えないけど分かる。お兄ちゃん困ってる。本当のこと言えないから困ってる。でも、言って。

間。
ユウイチロウ、ため息をつき。

ユウイチロウ:そうだよ。

緊張がゆるむ。

オリビア:よかった。
ユウイチロウ:よくない。
オリビア:いいえ、よかったのよ。これではっきりした。

手をはずそうとしたユウイチロウに。

オリビア:もうちょっと。
ユウイチロウ:え?
オリビア:もうちょっと、このまま。

手を再びしっかり握って、少し身体を預けるようにする。

オリビア:ちょっとでいいから。

小さい間。

ユウイチロウ:いいよ。

オリビア、見えない目で何かを見つめ続ける。
長い間。
やがて、ゆっくりと緊張がゆるむ。
優しく、手をはずしてやる。ユウイチロウ。

ユウイチロウ:包帯巻くよ。
オリビア:待って。このままでいい。
ユウイチロウ:でも。

と、包帯を持って巻こうとする。
その手を押さえる。

オリビア:今日は、このままにさせて。お願い。

間。

オリビア:いいの。本当に。

と、その手を取って引き寄せる。
ポーンとピアノ。
ぎりぎりとネジを巻く音。

オリビア:・・忘れない。

ユウイチロウ、その手を取り。

ユウイチロウ:雛祭りだよ。

二人、見つめ合う。
見えない目と見える目。
オルゴールの音。
再び、オリビアの手がユウイチロウの目を探る。
探り当てて、ユウイチロウのめをなでる。ユウイチロウされるまま。
そうして、イヴの手はユウイチロウのかおをなで、髪をまさぐる。その手に力が入り。
そのまま、顔を寄せて覆い被さろうとするが。

ユウイチロウ:やめろ!

バンっと明かりが変わる。

ⅩⅡ 鬼さんこちら手の鳴る方へ

オリビアがおびえた様子でユウイチロウを見つめている。
ユウイチロウは怒りの表情。

ユウイチロウ:どういうつもりだ。
オリビア:あたしは何も。
ユウイチロウ:何もじゃない。どういうつもりだと聞いている。
オリビア:ごめんなさい。
ユウイチロウ:ごめんなさいじゃわからん。
オリビア:そういうつもりじゃ。
ユウイチロウ:どういうつもりだ。

沈黙。

ユウイチロウ:こんな事させるためにお前をつくったんじやない。

沈黙。

ユウイチロウ:失望したよ。

沈黙。

ユウイチロウ:再調整しなくては。
オリビア:お願い、しないで。
ユウイチロウ:オリビア。こんなことをしてくれとわたしが頼んだか。
オリビア:いいえ。
ユウイチロウ:娼婦みたいな真似をしろと言ったか。
オリビア:いいえ。
ユウイチロウ:おまえは大事なあずみだ。わかるな。
オリビア:はい。
ユウイチロウ:それが・・。

むしろ哀しげだ。

ユウイチロウ:オリビア、お前は汚れのないあずみだ。大事な大事なわたしのあずみだ。
オリビア:はい。

間。
ユウイチロウ溜息をついた。
11時の鐘がなった。
はっとする。

ユウイチロウ:あと一時間か。急がなくては。

急ぎ足で去る。
取り残されたオリビア。

オリビア:あずみ。・・あずみ。

ふっと笑う。

オリビア:わたし、あずみよね。イヴなんかあずみじゃない。

ネジを巻く音。
女の子の笑い声。

オリビア:鬼さんこちら、手の鳴る方へ。鬼さんこちら手の鳴る方へ。

手を鳴らしている。
明かりが変わっていく。嫌な感じ。
オリビアは格子の前に移動。

オリビア:弥生、三月、桃の花、十三,七つのお祝いに、五人囃子の首添えて。呼びましょ、御所の鬼さんを。鬼さんこちら、手の鳴る方へ

オリビア、格子の前に座る。
ミルティスを手に取っている。
手をうちならしている。鬼寄せ。
耳を澄ます。
にこっとして、もう一度。

オリビア:弥生、三月、花曇り、十三、七つはもうすぎて、三人官女の首添えて。呼びましょ、御所の鬼さんを。鬼さんこちら、手の鳴る方へ。

手をうち鳴らす。
ネジを巻く音。
マリアが、甘酒やあられを入れたお盆を持って入ってきた。

マリア:きれいになったでしょう。
オリビア:ありがとう、マリア。
マリア:本当に目がお見えになるとよろしいんですのに。

と、ちょっとしんみり。

オリビア:でも、匂いはあるわ。とてもいい匂い。それに、お雛様たちを感じるもの。みんな。
マリア:それはようございます。・・いかがですか。

と、甘酒を勧める。

オリビア:これもいいにおい。

と、ちょっとかいで呑む。

オリビア:おいしい。
マリア:もういっぱい召し上がりませ。
オリビア:いただくわ。

と、つがれた白酒を持って。

オリビア:お兄ちゃんは。
マリア:お出かけになられました。お迎えが来て。

ぱたっと杯が落ちる。

オリビア:あの人ね。
マリア:はい。
オリビア:いつ帰るといってた?
マリア:夜遅くになると。あずみに悪いけれどとおっしゃってました。
オリビア:そう思うならいかなきゃいいのに。

激しく言った。

マリア:お嬢様。
オリビア:あの人なんかと。
マリア:お嬢様。
オリビア:あの人なんか死んじゃえばいいのに。
マリア:お嬢様。なんてことを。
オリビア:だって好きなんだもの。
マリア:お嬢様?

ただごとでない様子に。

オリビア:好きよ。大好き。あの人なんかに取られたくない。
マリア:まあ、お二人は仲がおよろしいから、妹のあずみさまがそうおっしゃるのも。
オリビア:違うの。
マリア:え?
オリビア:違うの。・・。違うの。

マリアははっとする。

マリア:まさか。お兄さまを。

オリビア、ちいさくこくんと頷く。
マリア、天を仰ぐ。

マリア:いけません。仮にも兄妹。血を分けた仲じゃありませんか。
オリビア:わかってる。わかってるけど・・どうにもならないの。
マリア:聞かなかったことにします。絶対口が裂けてもそんなことはおっしゃってはいけません。よろしいですか。オリビア、よろしいですね。

と、杯を拾い、厳しい顔で立ち去りながら。

マリア:なんてことを。

去る。
間。

オリビア:おにいちゃん・・。

溶暗。

ⅩⅢ あずみのフーガ

冬。
バレンタインデー。
夜。寒い。
ユウイチロウ寒さをこらえながら待っている。
やがてあずみがマフラーを巻いてやってくる。
あずみは、まいているマフラーをユウイチロウにかけてやる。
ユウイチロウはあずみを抱いて歩き出す。
肩預けながら。

あずみ :おにいちゃん。

二人の影がやがてフーガに呑まれる。
フーガは大きくなる。
溶暗。

ⅩⅢ マリアの毒

オルゴールの音。多少狂っている。
溶明。
再び七段飾り。引き割り幕は開いている。
その前でイヴ、るんるん気分。
ルナと、ミルティスがいる。
嬉しそう。
ユウイチロウが入ってくる。

ユウイチロウ:具合はどうだ。
イヴ :とてもいいわ。ユウイチロウ。

くくっと笑う。

ユウイチロウ:上機嫌だな。調子に乗るなよ。
イヴ :だって、ユウイチロウわたしを選んだんでしょ。

と、聞いていない。

ユウイチロウ:何を。
イヴ :あずみに。
ユウイチロウ:ばかなことを。
イヴ :だって。・・ねえ。

甘えて目線をやり、誘う。。
ユウイチロウはそれどころではない様子。

ユウイチロウ:うるさいな。
イヴ :そんなこといわずに、ねえ。ふふっ。いつもの。
ユウイチロウ:静かにしてろ。

と、冷たく拒否して、歩き回る。
ボーンとピアノの音。
イヴ、がくっときて瞬間停止。
ユウイチロウ、自分のことにかまけて気づかない。
ギリギリとネジを巻く音。
イヴ、ようやく動きだし、息づかいが荒そう。
ユウイチロウは気づかない。
イヴ、やっとの思いで動き、呼吸を整え。

イヴ :ねえ。ユウイチロウ。・・ユウイチロウ。
ユウイチロウ:なんだ、うるさいな。
イヴ :いいことしようよ。
ユウイチロウ:またな。
イヴ :今でなきゃいや。ふふっ。
ユウイチロウ:静かにしてろといったろ。
イヴ :ユウイチロウ。
ユウイチロウ:考え事をしてるんだ。黙ってろ。

イヴ、立ちすくむ。

ユウイチロウ:お前に用があるときはそういう。だから静かにまってろ。
イヴ :オリビアのことかんがえてるんでしょ。
ユウイチロウ:くだらんことを言うな。
イヴ :いや。

ギリギリとねじの音。

イヴ :いや。わたしのこと考えて。・・わたしのこと。・・わたし。

身体が揺れる。

イヴ :わたしを見てよ。おにいちゃん。

ユウイチロウ、はっとする。

ユウイチロウ:あずみ・・

信じられない。
イヴ、そのままユウイチロウの方にふらふらと倒れかかる。
慌ててユウイチロウが抱き留める。
見た目にはラブシーンの様相。
ミルティスを持ってオリビアが入ってきた。
固まるオリビア。
ユウイチロウの肩越しにイヴとオリビアの目が合う。
ユウイチロウにはオリビアが見えてない
イヴはにっこり笑うと、これ見よがしに、今度はユウイチロウにからみつくように抱かれる。

オリビア:おにいちゃん!!

驚いたユウイチロウ振り返りオリビアを見る。そのままの姿勢で固まる。
イヴ勝ち誇ったように更に固くユウイチロウを抱く。
ぱたぱたとマリアが入ってくる。

マリア:てっきりオリビアだと思っていたのに。

くすっと笑った。そのまま去る。
ピアノの音ボーン
オリビアが笑い出す。

ユウイチロウ:どうした。

行こうとする。
イヴがしがみつく。

ユウイチロウ:離せ。

思わず突き放す。
イヴ、そのまま座り込むような姿勢で倒れる。
ユウイチロウがさしのべた手を振り払い、オリビアはピアノの前に立つ。
ミルティスを置き、「青い目の人形」を弾きはじめる。

ユウイチロウ:オリビア。

答えず弾く。
ユウイチロウ、棒立ち。
弾き終わった。
立ち上がって、ユウイチロウの方を見た。

オリビア:わたしは人形なのね。
マリア:オリビア、落ち着いて。
オリビア:そうじゃない。お前はあずみだ。あのわたしを愛してくれたあずみだ。

オリビア、笑う。

オリビア:わたしがあずみ?

様子を見ていたユウイチロウ、オリビアの手を握って。

ユウイチロウ:落ち着いて。ね。なんでもないよ、なんでもない。

オリビア、けたたましくわらって、振り払う。

オリビア:よるな!私に手を触れるな。人間の分際で私にさわるな!

裂帛の気合い。
ミルティスを手にとって抱きながら。

オリビア:私は影よ。あずみの影。あなたが勝手に作った人形。

いとしそうにルナにさわる。

ユウイチロウ:わかったから、それをおいて。

と、近寄る。

オリビア:くるな!

ユウイチロウ、止まる。

オリビア:影なら影でいいわ。そう、影でいい。この子と同じ所詮人形だもの。でも、ときどき声が聞こえる。おにいちゃん、おにいちゃんって。だから私も言うの、おにいちゃん、おにいちゃんって。でも、それはわたしの声じゃない。私の歌じゃない。声の影、歌の影。影の声しかでてこない。
ユウイチロウ:あずみ・・。
オリビア:その声も影。
ユウイチロウ:あずみ。
オリビア:あずみ、あずみ、あずみ。声が影なら、名前も影よ。

笑う。

ユウイチロウ:あずみ、興奮しないで。

けたたましく笑う。

オリビア:興奮する。笑う。ピアノを弾く。お話しする。何でもできるのよね。

笑うが、ふっと真顔。


オリビア:でも影だって、欲しいときもある。影の声しか聞こえなくて、それでもおにいちゃんて呼びたいときに私はどうすればいい。

哀しげに笑う。

オリビア:わらうしかないわよね。悲しみの影よ。悲しむかわりに笑うだけ。

笑う。

オリビア:この悲しみは誰の影。笑いたくないのに笑わなければいけない。笑いたくないのに。笑いたくないのに。わたしは、誰。

切なく笑い続ける。
隙を見つけてユウイチロウが飛びつく。

オリビア:いやーっ。
ユウイチロウ:もう大丈夫だよ。
オリビア:さわるな!助けて!!おにいちゃーん!

機能停止。

ⅩⅣ 雛の夜に死す

オリビア、ぐったりしてる。

ユウイチロウ:あずみ、あずみ、あずみ!

だが、何も答えない。
ユウイチロウ、ぐっとだくが、やがて静かに、オリビアを置く。
そのまま、見つめている。
間。
ネジを巻く音。

ユウイチロウ:お前のせいだ。

イヴ、ユウイチロウを見る。

イヴ :わたし。
ユウイチロウ:そうだ、お前が!
イヴ :わたしだってあずみよ!
ユウイチロウ:お前はただの出来損ないの人形だ。

ユウイチロウ、イヴの傍による。
がっと、引き起こし。

ユウイチロウ:お前はあずみではない。あずみはそんなやつではなかった。

そのまま、首を絞めようとする。

イヴ :おにいちゃん。

切ない声。
まさにあずみ。
ユウイチロウの手が止まる。
そのままの姿勢で。

ユウイチロウ:なに。

驚愕。

イヴ :おにいちゃん、どうして。

12時の鐘が鳴る。
オルゴールの音が重なるがそれは少し狂っている。

ユウイチロウ:お前は・・。

ユウイチロウ、思わず手をして、座り込む。
倒れたイヴ、ふわーっと立ち上がる。
ルナを持ち。

イヴ :12時ね。わたしの時間。

オルゴールの音が重なるが、それは少し狂っていて、いらだたしい。

イヴ :ユウイチロウ。
ユウイチロウ:なんだ。
イヴ :あなたがこんな風に作ったのよ。わたしを。
ユウイチロウ:・・・。
イヴ :思い出すなあ。
ユウイチロウ:何を。
イヴ :わたしが生まれた夜。こんな風に鐘が鳴っていた。
ユウイチロウ:忘れた。
イヴ :わたしは覚えてる。

オルゴールが鳴る。

イヴ :目が覚めたとき、あなたはそこにいた。ああ、これがユウイチロウだとわたしは思った。わたしが愛した人だと。

あずみの意識が入っている。

ユウイチロウ:錯覚だ。プログラムの。
イヴ :そうかもしれない。けれど、わたしは思った。これがわたしの人だと。
ユウイチロウ:・・お前の思い違いだ。
イヴ :違う。
ユウイチロウ:違う?
イヴ :違う。わたしの身体に繰り返し刻み込まれた、あなたの痕跡がそういう。これがわたしの人だと。ユウイチロウ。
ユウイチロウ:なんだ。
イヴ :思ったことはない。思えば思うほど離れていく人を。
ユウイチロウ:ない。

イヴ、微かに笑う。

イヴ :かわいそう。

間。

イヴ :どこにいくのかな。わたしの思いは。
ユウイチロウ:どこにもいきはしない。終わりだ。
イヴ :終わり?終わり。・・いいえ、終わりはしないわ。わたしが死んでも、あなたが死んでも終わりはしない。ご覧なさいあれを。

何かが降ってくる。

ユウイチロウ:ばかな。
イヴ :いつまでも続くの。降り続く雪のように。涙が雨になるように。拒み続けられても思うことは止(と)められはしない。だって、こんなにすきなんだもの。

降り続く雪。

イヴ :雛祭り。

笑う。

イヴ :散っていく桃の花などふさわしくはない。空のそこから落ちてくる真っ白な雪。降り積もり、降り積もる。あなたを覆い尽くす。わたしの思い。人形にふさわしくてなくて。
ユウイチロウ:言うことはそれだけか。
イヴ :いいえ。

激しい言葉。

イヴ :言うことはそれだけかっ。・・・。  

狂笑。

イヴ :言いたいことは尽くせやしない。いつだってつくせやしない。いつまでたっても尽くせるものですか。いつもわたしがどんなに哀しい目をしてあなたを見ていたか。どんなに苦しい思いをこらえていたか。言ってしまえば終わってしまう。いわなければ届かない。どんなにわたしはこの一言を言いたかったか。ユウイチロウ。どうしようもなくあなたが好きなことを。
ユウイチロウ:言えばよかっただろう。
イヴ :そうすればあなたはわたしを処分する。愛玩用の人形じゃなくなるから。わたしがあずみでは耐えられなくなるから。
ユウイチロウ:・・・。
イヴ :だからわたしは言わないことにした。

空を見上げる。
雪は降る。

イヴ :お兄ちゃん、私を好き?

間。

ユウイチロウ:時間だ。

イヴ、笑う。
チョーカーをぶちきる。

イヴ :そうよね。愛玩用の人形にふさわしい言葉だわ。お前の用は終わった。使用済み。あとは、ゴミ捨て場。

間。

イヴ :でも。・・それでも、思いは止まらない。わたしのプログラムはそういうの。ユウイチロウ、あなたが好き。ユウイチロウ、あなたが好き。ユウイチロウ、あなたが好き。

歌うよう。

イヴ :でも。

間。
まっすぐに。

イヴ :すきよ、お兄ちゃん。

ユウイチロウ、無言でイヴに近寄り、イヴの首を絞める。
イヴ、苦しげに倒れながら。

イヴ :お兄ちゃん・・。

倒れる。

ユウイチロウ:機能停止。

立ちつくすユウイチロウ。
雪は降る。
全ての人々に雪は降り続く。
そのまま停止。
オルゴールの音。
だんだん薄暗くなる。
イヴの手が微かに動く、ユウイチロウに向かってのびる。停止。
イヴの手が切なく空に浮く中雪は降り続く。
【 幕 】


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